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安倍晋三『美しい国へ』―この本を中学・高校の公民の授業で使ってほしい

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2012年12月03日

安倍晋三『美しい国へ』―この本を中学・高校の公民の授業で使ってほしい


美しい国へ (文春新書)美しい国へ (文春新書)
安倍 晋三

文藝春秋 2006-07

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 自民党の安倍総裁が、2006年9月の首相就任直前に発表した本。あとがきで安倍氏が記しているように、
本書は、いわゆる政策提言のための本ではない。わたしが10代、20代の頃、どんなことを考えていたか、わたしの生まれたこの国に対してどんな感情を抱いていたか、そしていま、政治家としてどう行動すべきなのか、を正直につづったものだ。だから若い人たちに読んでほしいと思って書いた
ものであるためか、国家観、日米同盟、アジア諸国との関係、年金制度、教育改革について、割とオーソドックスな内容が並んでいるとの印象であった。

 そういう意味では、中学・高校の公民の授業でこの本を取り上げて、基礎的な政治知識を子どもたちに習得させるのに役立つのではないだろうか?安倍氏が再び総裁の座に就き、次の衆院総選挙を経て総理再登板となる可能性が高まった今、マスコミは相も変わらず「お腹イタイイタイで総理を辞めた人」というレッテルを貼って必死にネガキャンを展開しようとしている。そういうマスコミに毒されない、健全な政治的視野を持った子どもたちを教育現場で育ててほしい。

 少し話がそれるが、日本の教育現場では、(1)古典(特に『四書五経』)、(2)政治、(3)経済の3つが十分に教えられない。これは現代の日本人にとって悲劇であると思う。『論語』などの古典は、太古の昔から戦前まで長きにわたって日本人が読み続けた書物であり、日本人の伝統的精神の根幹を成している。また、政治と経済は、現在の社会がどのような仕組みで動いているのかを理解する上で必要不可欠な知識だ。(1)~(3)をセットで身につけた人材こそが、国内外の様々な情勢変化や圧力に対応しながら、日本人として望ましい社会のあり方を主体的・立体的にデザインし、その実現にコミットできるようになるはずである。しかし、残念なことに、現在の教育制度はそのような人材を輩出するように設計されていない。

 戦後のGHQは、アメリカにとって有利に動く日本人を育成するような教育制度へと改革した。アメリカは、日本を二度と軍国主義に向かわせず、一方でアジアにおける西側陣営の代表として、軍事力なしで中ソの共産主義に対抗しうる国力を蓄えさせようとした。つまり、「軍事力とマクロ経済の仕組みはアメリカが政治主導で何とかする。だから、日本は頑張ってミクロ経済の面で成長してくれ」ということであった。こうした思惑の下で生まれたのが、とにかく他人の言うことをよく聞いて馬車馬のように働き、会社の成長に貢献する勤勉で均質な人間であった。

 伝統に対する認識を奪い取られ、社会に関するマクロ的洞察を磨く機会を失った人間は刹那的であり、第三者が好きなようにコントロールできる。その意味で、アメリカは(途中で日米貿易摩擦などの誤算はあったにせよ、)当初の目的を達成したと言える。しかし、アメリカにとってコントロールしやすいということは、他の国にとってもコントロールしやすいということである。事実、中国は国民に気づかれないように、親中派の政治家とマスコミを通じた対日工作を行っているし、韓国もK-POPで友好的な顔を見せながら、日本の歴史認識と領土を歪めようとしている(もちろん、良識ある日本人は、これら諸外国の陰謀に騙されない態度を身につけている)。こうした世界情勢の中を主体的に生き抜くために、古典、政治、経済の基礎知識を子どもの頃からしっかりと学習させて、本当の意味での考える力、実行する力を養成してほしいものだ。

 話を元に戻そう。タイトルにある「美しい国」とはどんな国なのか?その答えは本書では必ずしも明確にされていない。むしろその答えは、安倍氏が首相に就任した直後の所信表明の中にある。所信表明の草案は、安倍氏のスタッフがこの本を徹底的に読み込んで準備したという。
 このような状況にあって、今後のあるべき日本の方向を、勇気をもって、国民に指し示すことこそ、一国のトップリーダーの果たすべき使命であると考えます。私が目指すこの国のかたちは、活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた、「美しい国、日本」であります。この「美しい国」の姿を、私は次のように考えます。
 一つ目は、文化、伝統、自然、歴史を大切にする国であります。
 二つ目は、自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国であります。
 三つ目は、未来へ向かって成長するエネルギーを持ち続ける国であります。
 四つ目は、世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国であります。
(引用は小川栄太郎著『約束の日 安倍晋三試論』による)
約束の日 安倍晋三試論約束の日 安倍晋三試論
小川 榮太郎

幻冬舎 2012-09-03

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 ただ、『美しい国へ』の最終ページに、「1回の失敗で人生の決まる単線的社会から、働き方、学び方、暮らし方が複線化された社会に変えていきたいと思う」とあり、これも「美しい国」の重要な要素の1つであろう。所信表明中の「活力と『チャンス』と優しさに満ちあふれ・・・」の部分とも対応する。日本は失敗に対して厳しく、再チャレンジを認めない社会と言われてきた。そんな中で、「潰瘍性大腸炎」という厚生労働省指定の難病を克服した安倍氏自身が再チャレンジに成功した時、つまり首相に返り咲いて民主党政権の失策をカバーして余りあるほどの成果を残した時、日本国民は安倍氏を賞賛し、再チャレンジが可能な社会へと傾き始めるのかもしれない。

 これは、特に40代~50代の中高年層にとって朗報であろう。かつて栄華を誇った大企業が次々と業績を悪化させ、聖域なきリストラに走っている。真っ先にそのターゲットとなるのが、バブル期に大量採用された中高年層である。彼らは子どもを抱え、ローンを抱え、介護が必要な親も抱えている。リストラされた人たちは、一刻も早く次の職場を見つける必要があるのだが、残念ながら今の転職市場は彼らに対して最も冷たい。

 これは、企業組織のピラミッド構造に人口構造と重ね合わせるとどうしても中高年層があふれてしまう、他方で雇用を受け入れる新しい産業基盤がまだ整っていない、という構造的な問題であるから、一朝一夕に解決できる話ではない。だが、安倍氏の再チャレンジが中高年にとっての希望となるだけでも、少しは社会の前途が明るくなるのではないか?そしてもちろん、安倍”総理”には、この構造的問題を解決する経済政策や雇用対策を期待している。




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