このカテゴリの記事
『致知』2017年11月号『一剣を持して起つ』―米朝対話が成立するとはアメリカが韓国を捨てることを意味する(ことを左派は解っていない)、他
『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?
『正論』2017年9月号『戦後72年/誰も金正恩を止めない・・・』―日本が同じように統治したのに戦後の反応が異なる韓国と台湾、他

お問い合わせ
お問い合わせ
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~


◆別館◆
こぼれ落ちたピース
アクセスカウンター(PV)
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

最新記事
タグクラウド

Top > 韓国 アーカイブ
2017年11月07日

『致知』2017年11月号『一剣を持して起つ』―米朝対話が成立するとはアメリカが韓国を捨てることを意味する(ことを左派は解っていない)、他


致知2017年11月号一剣を持して起つ 致知2017年11月号

致知出版社 2017-11


致知出版社HPで詳しく見る by G-Tools

 近藤:中国の場合、国内にコピー選手をつくるんです。つまり福原愛なら福原愛のコピー、平野美宇なら平野美宇のコピーといった具合に、同じような戦い方をする選手をつくった上でその対策を練ってくる。
 国分:それはすごいな。
 近藤:なんせ中国には指導者と選手のプロが3万人はいますから、そういったことも可能なんです。日本には30人くらいしかプロはいませんから土台からして違う。
(国分秀男、近藤欽司「かくて日本一へと導いてきた」)
 中国と言うと模倣品のイメージがどうしてもつきまとう。そして、それはスポーツの世界でも同じようである。ただ、同記事で紹介されていたが、中国には「人無我有」、「人有我磨」、「人有我創」という諺があるそうだ。最初は自分だけが技術を持っている段階である。しかし、時間が経てば相手が自分の技術を真似してくる。そうしたら、相手に負けないように技術に磨きをかける。さらにそれだけでは飽き足らず、今度は相手に真似されないよう、新しい技術を創ってしまう。

 中国人にはこういうメンタリティがあることを忘れてはならない。私は、中国が21世紀のイノベーション大国になり得る十分なポテンシャルを持っていると思う。そして、日本は、かつて中国から技術や社会制度を学んだように、中国のイノベーションを輸入し、日本流にアレンジすることで生き延びていくのではないかと予想している。非常に格好悪いと思われるかもしれないが、これが小国・日本の一種の宿命である(以前の記事「『視座を高める(『致知』2016年5月号)』―日本は中国がイノベーション大国になることをアシストし、彼らから学べるか?」を参照)。

 さて、米朝関係が膠着状態に陥っている。北朝鮮は体制を維持するために核開発に邁進していると言われることが多いが、体制維持が目的であればアメリカに喧嘩を売る必要はなく、大人しくしていればよいだけの話である。アメリカに喧嘩を売ってでも核兵器の開発を急いでいるのは、体制維持以上の目的があると考えるのが自然である。
 北朝鮮が既に持ってしまった核ミサイルを自ら放棄することはないでしょう。そして、その力の誇示によってアメリカに国交を結ばせ、米軍を撤退させて韓国を併合する。この目標こそ、金日成、金正日、金正恩とその血筋によって継承された、まさに金王朝の究極の目的なのです。
(中西輝政「時流を読む(第2回) 歴史という大きな絵の中に事象を置けば、対処法が見えてくる。北朝鮮問題は日本と日本人に、国として、また人として、いかにあるべきかを問うているのだ」)
 もちろん、アメリカは北朝鮮の非核化を諦めてはいない。アメリカにとって、朝鮮半島での第一目標は北朝鮮の非核化であり、第二目標は南北分裂の現状を維持することである。南北が分裂していることによって、アメリカと中国・ロシアという大国同士の対立、冷戦構造の遺産を、朝鮮半島内の小国同士の対立に代理させることができる。

 以前の記事「『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?」で、朝鮮半島のシナリオの1つを示してみたが、ここで改めて、朝鮮半島で起こりうるシナリオを私なりに整理してみたいと思う。

 ①北朝鮮への経済制裁が一定の効果を上げる場合
 中国、ロシアが経済制裁に協力することが前提であるが、制裁が効果を上げれば、北朝鮮はこれ以上の核開発を断念するかもしれない。ただし、北朝鮮が既に保有している核を放棄することにはつながらない。それに、経済制裁から数年が経ってほとぼりが冷めた頃に、中国とロシアが制裁の隙間を縫って北朝鮮を再び支援する可能性がある。

 ②金正恩斬首計画を実行する場合
 金体制を打倒すれば北朝鮮は核開発を止めるだろうとの予測の下に、金正恩の斬首が計画されたことがある。アルカイーダのウサーマ・ビン・ラーディンはパキスタンで暗殺された。ただ、ビン・ラーディンの場合は、彼の行動をアメリカ側がある程度トレースすることが可能になっており、かつ、ビン・ラーディンの側近にスパイがいて、彼の居場所をアメリカにリークしていたと言われる。これに対して、金正恩の場合は居場所を突き止めるのが困難である。何せ、北朝鮮には地下施設が何千と存在するからだ。また、金正恩を裏切ってアメリカに位置情報をリークするような人物も現れていない。よって、この斬首作戦は実現可能性が低いと言わざるを得ない。

 ③アメリカと北朝鮮が武力衝突する場合
 韓国は米韓同盟に基づいてアメリカと一緒に北朝鮮を攻撃するはずである。「はずである」と書いたのは、最近の韓国は左傾化が激しく、アメリカ側につくという確証がないからである。文在寅大統領も、経済制裁が行われている間に北朝鮮に人道支援を行うぐらいの親北派である。
 ⅰ)韓国がアメリカを裏切らなかった場合
 韓国・アメリカ(・日本)VS北朝鮮・中国・ロシアという構図になる。これはまさに朝鮮戦争と同じであり、アメリカが勝つ可能性は五分といったところであろう。アメリカが勝利すれば北朝鮮の非核化に成功し、北朝鮮は韓国に併合されて単一の資本主義国となる。一方、アメリカが敗れた場合は米朝間で和平条約が締結され、アメリカは北朝鮮の核兵器を認めるとともに、韓国から米軍を撤退させることになる。上手くいけば南北の分裂は維持されるが、韓国から米軍の脅威が消えたのを見た北朝鮮は、南北統一に乗り出すかもしれない。その場合、韓国の資金が北朝鮮の核に投入され、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生することになる。
 ⅱ)韓国がアメリカを裏切った場合
 アメリカ・日本VS北朝鮮・韓国・中国・ロシアという構図になる。これはアメリカにとってかなり不利な状況となる。仮にアメリカが勝利すれば、以前の記事「『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?」で書いたようになる。ただ、これは可能性の低いシナリオを仰々しく書いてしまったと反省している。ⅱ)ではアメリカが敗れる可能性の方が高く、その場合は、ⅰ)よりも速いスピードで南北統一が進み、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生する。

 ④アメリカが北朝鮮と対話する場合
 ⅰ)アメリカが北朝鮮の核兵器を認めて国交を樹立する場合
 北朝鮮がこれだけの核兵器を保有してしまった以上、アメリカは北朝鮮の核を認め、平和条約を締結して国交を結ぶべきだという意見が、主にアメリカの民主党内から出始めているようである。だが、アメリカが北朝鮮と国交を結ぶというのは、かつてアメリカが中国と国交を結んで台湾を捨てたのと同様に、韓国を捨てることを意味する。もっとも、捨てられた韓国は喜んで北朝鮮と一緒になるかもしれない。すると、朝鮮半島に凶悪な核保有国家が誕生する。

 ⅱ)アメリカが北朝鮮の核兵器放棄を迫る場合
 これは非常に難しい交渉になる。核兵器の放棄を迫られた北朝鮮は、間違いなくアメリカに対して在韓米軍の撤退を要求してくる。北朝鮮が韓国を併合するためである。アメリカとしては、これは到底呑める条件ではない。だが、アメリカの第一目標は北朝鮮の非核化であり、左傾化した韓国を見て、第二目標である南北分裂の現状維持を犠牲にしてでも、在韓米軍の撤退を実現させるかもしれない。この場合、朝鮮半島には、非核化された社会主義国家が誕生する。仮にこの交渉が長引くと、その間に北朝鮮は核兵器(アメリカ本土に届くICBM)を完成させてしまう。そうなると米朝の武力衝突のリスクが高まり、そのシナリオは③で示した通りとなる。

 このように見てくると、アメリカが第一目標、第二目標をともに達成できるのは、韓国が裏切らず、アメリカが北朝鮮との戦争に100%勝てる自信がある場合に限られることが解る。逆に、下手にアメリカが動こうものなら、朝鮮半島が社会主義国家として統一されることを誘発する恐れがある。最悪のシナリオは、韓国の資金が北朝鮮の核に注入されることである。だから、アメリカとしては経済制裁以上に動きようがないというのが正直なところだろう。左派はよく、「解決策は対話しかない」などと言うが(『世界』2017年11月号の特集タイトルは「北朝鮮危機―解決策は対話しかない」であった)、アメリカが北朝鮮と対話を成立させるということは、上記で見たように韓国を捨てることを意味する。この点を左派は理解していないように思える。

 中国は北朝鮮問題で手を焼いていると言われる。だが、実はこれも怪しい面がある。中国はずっと、金正男をかくまっていた。北朝鮮に対して、「いつでも金正男を中心とした政権を北朝鮮内に打ち立てることができる」というメッセージを送るためである。いわば、金正男は中国が握っている「玉」であった。だが、金正男が暗殺されたということは、中国がその玉を放棄したということである。つまり、中国は金正恩政権と上手くやっていく道を選択したと言えなくもないのだ。

 日本にとって最悪なシナリオは、アメリカが北朝鮮の非核化に失敗して朝鮮半島に凶悪な核保有国家の出現を許した挙句、中国の一帯一路構想にトランプ大統領がビジネス的な視点で安易に乗っかってしまうことである。アメリカが中国と手を結べば、日米同盟の意義は希薄化し、日本の周りをアメリカ、中国、朝鮮国家という3つの巨大核保有国が取り囲むことになる。さらに言えば、中国が提唱する一帯一路構想は南シナ海を通っているため、アメリカが一帯一路構想に賛同するということは、南シナ海の諸問題をアメリカが黙殺することにつながる。こうなると、日本は太平洋上のシーレーンを確保できなくなる。となれば、残る選択肢はロシアと同盟を結ぶことしかない。ロシアが注力している北極圏ルートの開発に日本が協力するのである。

4大国の特徴(これまで)

 従来、私が考える現代の4大国、すなわちアメリカ、ドイツ、ロシア、中国は、上図のような関係にあった(詳細は以前の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」を参照)。基本的には、アメリカ・ドイツという資本主義国と、ロシア・中国という旧共産圏の国が対立している。ただ、アメリカ・ドイツ、ロシア・中国は必ずしも一枚岩ではなく、しばしば対立する。一方で、表向きは対立しているアメリカと中国、ドイツとロシアが協力する局面もある。アメリカと中国の間、ドイツとロシアの間では貿易が盛んであり、経済的な結びつきが強い。このように、4大国はやや複雑な関係にある。

4大国の特徴(これから)

 ところが、アメリカが中国に接近することで、この構図が変わる可能性がある。まずはアメリカ・中国とドイツ・ロシアが対立するのである。ただ、細部を見れば、アメリカと中国の間、ドイツとロシアの間で対立を抱える一方、アメリカとドイツ、中国とロシアが協力するという関係がある。日本はロシア・ドイツ側につくことになる。日本はロシアの北極圏ルートを通じてドイツとつながり、さらにはEUとの関係を深化させる。こういうシナリオが現実味を帯びてくるかもしれない。

 ただ、日本はアメリカ・中国との関係を完全に断ち切ることはできないだろう。基本スタンスはロシア・ドイツに寄りながら、アメリカ・中国のよいところは引き続き吸収し続ける。これが大国に挟まれた小国の生きる知恵であり、私は「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる(以前の記事「『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?」を参照。同記事は米中に挟まれた日本のちゃんぽん戦略を想定しているが、米中・露独に挟まれた場合も同様である)。


2017年10月03日

『正論』2017年10月号『日本は北朝鮮と戦わないのか/傲る中国』―朝鮮半島の北が資本主義国家、南が社会主義国家になる可能性?


月刊正論 2017年 10月号 [雑誌]月刊正論 2017年 10月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2017-09-01

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 《参考記事》
 ○日本にとっては、朝鮮半島は南北分裂の現状維持がベスト。
 『「慰安婦」戦、いまだ止まず/台湾は独立へ向かうのか/家族の「逆襲」(『正論』2016年3月号)』―朝鮮半島の4つのシナリオ、他
 『トランプ大統領/進まぬ憲法改正/「生前退位」でいいのか/「死刑廃止」宣言(『正論』2017年1月号)』―朴槿恵問題は一歩間違えば朝鮮半島の”革命”を引き起こしていた、他

 ○朝鮮半島が社会主義国として統一される可能性がある。
 『巨頭たちの謀事/朴槿恵政権崩壊(『正論』2017年2月号)』―ますます可能性が高まった「朝鮮半島統一」に対してどう対処すべきか?
 『愚神礼讃ワイドショー/DEAD or ALIVE/中曽根康弘 憲法改正へ白寿の確信(『正論』2017年7月号)』―日本は冷戦の遺産と対峙できるか?

 ○アメリカが中国と手を組んで日本のはしごを外したら、ロシアと手を結ぶべき?
 『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他
 『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他

 一介の経営コンサルタントが書くアジア情勢に関する記事など、上記のように矛盾だらけで取るに足りない内容が多いのだが、その矛盾をさらに複雑にしかねない記事をこれから書くことをどうかご容赦いただきたい。ブログ別館の記事「牧野愛博『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』―アメリカも北朝鮮も本気で戦争をする気はないと思う」では、アメリカが北朝鮮の報復を抑えるために制圧すべき拠点、ミサイル基地などが膨大な数に上るため、アメリカは本気で北朝鮮を攻撃することはできないと書いた。しかし、本号には次のような記述があった。
 主戦論の民間における主唱者、ジョン・ボルトン元国連大使は、作戦計画をある程度知る立場から、ソウルに向けた北の高射砲群を大部分一斉破壊することは、「なしうる」(doable)と強調している。
(島田洋一「アメリカの深層 第26回 まさに開戦の時―」)
 現在、韓国には20万人強のアメリカ民間人や在韓米軍人の家族が滞在している。そのことを理由に米軍の攻撃開始はない、という見方をする向きも少なくない。自国民間人の命を危険にさらしてまで、米軍は攻撃を始めないし、始めるときは、彼らを退避させるはずだ、という理屈だ。また、日本に住む在日米軍人家族を含む米国人も退避させない限り、軍事攻撃はないと見る人もいる。

 本当だろうか。筆者は、彼らの退避はなくとも攻撃は始まり得ると考える。そのための手段があるからである。簡単に言えば、奇襲攻撃だ。(※この後、具体的な奇襲攻撃の説明が続くが、軍事面の詳細な話に入るため割愛する)
(香田洋二「アメリカが北朝鮮を攻撃しない理由は初めからない」)
 以前の記事「『北朝鮮”炎上”/日本国憲法施行70年/憲法、このままなら、どうなる?(『正論』2017年6月号)』―日本はアメリカへの過度の依存を改める時期に来ている」で、アメリカは北朝鮮の軍事力が上がるのを敢えて待っているのではないかと書いた。北朝鮮の軍事力が中途半端なままでは、インテリジェンス頼みのアメリカは十分な情報が収集できず、適切な対北戦略が立てられない。北朝鮮の軍事力が上がってくれば、巨大化した北朝鮮の基地を衛星写真で正確に知ることができるし、またサイバー攻撃を仕掛けて北朝鮮の機密情報を大量に入手することも可能になる。これらの情報に基づいて、様々な選択肢を検討しながら、北朝鮮を短時間で一気に潰す戦略を構想する。上記の引用文は、その戦略が相当程度まで完成していることを意味し、同時にやはりアメリカはこれまで時間稼ぎをしていたのだと私は感じた。

 朝鮮半島をめぐる各国の思惑を私なりに整理してみると以下のようになる。

 ・アメリカ・日本=北朝鮮を非核化する。南北分裂はそのままとし、現状維持を目指す。

 ・北朝鮮=核の恫喝によってアメリカから体制の維持を認めてもらう。というのは建前であって、実際には、アメリカをICBMで牽制しながら韓国を攻撃し、最終的には朝鮮半島を社会主義国家として統一したいと目論んでいる。

 ・韓国=北朝鮮を非核化する。だが、これもまた建前であって、左傾化が著しい韓国は、実は北朝鮮と一緒になりたいと願っている。文在寅大統領が、国連の制裁決議が通った後で、北朝鮮に対して人道支援を行ったのは、文大統領が左傾化していることの表れである。統一国家は親中国家となる。アメリカとの同盟は放棄する。北朝鮮の核に韓国の資金を投入して、強力な核保有国となる。共産主義の38度ラインを朝鮮半島の南まで押し下げて日本と対立する。

 ・中国・ロシア=香田洋二「アメリカが北朝鮮を攻撃しない理由は初めからない」では、中国・ロシアも北朝鮮の非核化には賛成しており、金正恩体制を崩壊させないのであれば、アメリカの軍事攻撃をギリギリ容認するだろうと書かれていた。しかし、中ロは、金正恩体制が存続さえしてくれれば、国際世論のほとぼりが冷めた頃に再び北朝鮮の核開発支援を再開するに違いない。日本では、北朝鮮の暴走に中ロが手を焼いていると報道されることが多いものの、中ロとしては、朝鮮半島に核保有国を作り、将来的には日本を奪取したいというのが本音である。

 こうして見ると、朝鮮半島に核保有国を誕生させたがっている国の方が多いことが解る。朝鮮半島の核保有国を容認すると、いわゆる「核ドミノ」が発生する恐れがある。具体的には、まず朝鮮半島の核に反応して日本が核を保有する。それにつられて、東南アジア諸国も朝鮮半島や中国の核に対抗するために核の保有を目指す。こうなると、核拡散防止条約(NPT)は事実上骨抜きになる。NPTに関しては、既にインドという例外を作ってしまっている以上、さらなる例外の発生は避けたいところである。それに、核保有国が増えることは、先般成立した核兵器禁止条約の流れにも逆行することになる。だから、何としてでも北朝鮮を非核化しなければならない。

 北朝鮮を非核化するには、①外交による解決と②軍事的手段の2つがある。まず、外交による解決だが、アメリカと北朝鮮が直接対話をする。アメリカは北朝鮮に対して核の放棄を迫る代わりに、北朝鮮はアメリカに対して金正恩体制の維持を約束させる。だが、北朝鮮の要求はこれだけにとどまらないであろう。前述の通り、北朝鮮の真の狙いは南北統一であるから、北朝鮮は韓国との戦いを優位に進めるため、在韓米軍の撤退を要求する。これは、アメリカとしては到底呑める条件ではない。ただ、韓国の文大統領がアメリカの意向に反して左傾化している現状を踏まえると、アメリカが韓国を捨て石にする可能性もゼロではない。朝鮮半島の非核化の価値と、米韓同盟の価値を天秤にかけた場合、アメリカは前者を選択するかもしれない。

 しかし、そもそもこの交渉は決裂するリスクが高い。
 仮に外交交渉等の非軍事的手段で北朝鮮の核ミサイル開発と使用を一時的に合意した場合、続く核ミサイル放棄交渉において北朝鮮が全面放棄に同意すれば本件は一件落着であり、正に万人の望む結果となる。問題は北朝鮮が同意しない場合であり、その際に次の交渉カードは最早残っていない。

 今述べた、交渉にこぎつけたものの核ミサイル廃棄交渉が決裂した場合及び現在の状況である北朝鮮との対立が続き、問題解決の糸口が見つからない場合の両ケースにおいて、米国をはじめとする国際社会が何もしない場合には、「ズルズル」と北朝鮮の核ミサイル開発と実戦化を黙認してしまうこととなる。
(香田洋二「アメリカが北朝鮮を攻撃しない理由は初めからない」)
 それに、仮に交渉が成功して北朝鮮の核放棄に成功したとしても、繰り返しになるが、金正恩体制が続く限り、中国とロシアが再び北朝鮮の核開発の支援を行う恐れがある。

 よって、北朝鮮を完全に非核化するには、金正恩体制を完全に崩壊させるしかない。つまり、トランプ大統領が発言したように、「北朝鮮という国を完全消滅させる」しかない。アメリカは、北朝鮮がアメリカ本土に届くICBMを完成させた頃を見計らって、自衛戦争と称して北朝鮮に攻め込むであろう(日本にとっては、集団的自衛権の行使が問われる初のケースとなるだろう)。冒頭の引用文のように、短時間で北朝鮮のミサイル基地や核関連施設を封じ込める作戦が本当にあるならば、アメリカの勝利の可能性が見えてくる。アメリカが気をつけるべき点は、100万人を超えるとされる北朝鮮の人民解放軍とのゲリラ戦にズルズルと巻き込まれることだ。アメリカがゲリラ戦に弱いことはベトナム戦争、アフガン戦争、イラク戦争で経験済みである。

 アメリカが北朝鮮を攻撃すれば、北朝鮮VSアメリカ・韓国となる。当然、中国とロシアが出てくるから、中国・ロシア・北朝鮮VSアメリカ・韓国となる。だが、左傾化した韓国はアメリカを裏切って(米韓同盟を破棄して)北朝鮮側につくことも考えられる。すると、中国・ロシア・北朝鮮・韓国VSアメリカとなり、自ずと日本はアメリカを支援しなければならない立場に置かれる(ここで集団的自衛権の行使が問われる)。中国・ロシア・北朝鮮・韓国VSアメリカ・日本の結果がどうなるかは私には予想がつかない。仮に前者のグループが勝利すれば、朝鮮半島は社会主義国家として統一されるであろう。さらに悪いことに、朝鮮半島の非核化は達成されないままとなる。

 アメリカ・日本が勝利した場合、アメリカは北朝鮮の跡地に新たな国家を建設する。朝鮮半島では、北側にアメリカ主導で新しい資本主義・民主主義国家であり非核化された国家が生まれる一方で、南側には左傾化しアメリカを裏切った韓国が存在するという構図になる。つまり、朝鮮半島は、北側が資本主義国家、南側が社会主義国家という、現在とは正反対の配置になる。そして、北側の資本主義国家は中ロと南の韓国によって抑え込まれ、南の韓国は北側の資本主義国家と日米によって抑え込まれるという図式が成立する。

 ここで留意しなければならないのは、左傾化して中ロ側についた韓国が核開発に乗り出す可能性である。韓国と中ロの間には新しい資本主義国家が存在しているため、韓国と中ロのつながりは地理的には一応分断されており、中ロが北朝鮮に対してしたような直接的な支援はやや困難になる。しかし、韓国ほどの資金と技術があれば、中ロの支援をそれほど受けなくても、独自に核を開発することが可能かもしれない。とはいえ、韓国にとって核開発は一からの開発になるから、韓国と言えども一定の時間が必要になる。アメリカや日本をはじめとする国際社会としては、北朝鮮の核開発を20年以上も放置して現在の問題を招いた過去を反省し、韓国の早期封じ込めに注力することが今後の重要な課題となるのかもしれない。


2017年09月12日

『正論』2017年9月号『戦後72年/誰も金正恩を止めない・・・』―日本が同じように統治したのに戦後の反応が異なる韓国と台湾、他


正論2017年9月号正論2017年9月号

日本工業新聞社 2017-08-01

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 (1)安倍政権が窮地に立たされている。NHKが公表している内閣支持率の推移を見ると、特定秘密保護法の公布(2013年12月)、集団的自衛権の憲法解釈の変更(2014年1月)、安保法制の公布(2015年9月)、共謀罪(テロ等準備罪)を新設した改正組織犯罪処罰法の公布(2017年6月)の際には、様々な批判があったにもかかわらず、内閣支持率はそれほど大きく変化していない。これに対して、森友学園問題、自衛隊のPKO日報問題、加計問題が発覚すると内閣支持率は急落し、7~8月は不支持が支持を上回った。私にはこの現象が不思議に見える。

 報道を詳しく追っているわけではないので私の認識が不正確な部分もあるかもしれないが、森友学園問題は財務省のチョンボにすぎない。安倍首相が籠池氏に100万円を渡したとされる点も、籠池氏が安倍首相に100万円を渡していたのならば問題になるだろうけれども、本件はお金の流れが逆である。自衛隊のPKO問題は、日報があった、なかったという問題であり、行政組織の透明性、政府の説明責任が問われた一件である。しかし、この手の不透明性や政府の説明の曖昧さは、安保法制や共謀罪をめぐる審議でも見られたことであり、何も防衛省が特別というわけではない(もちろん、だからと言って防衛省や政府が責任を免れられるわけでもない)。

 報道を見ていると、内閣支持率急落にとって致命的だったのは、どうやら加計学園問題のようである。国家戦略特区制度を利用して愛媛県に獣医学部を新設する際に、安倍首相への忖度が働いたのではないかということ、そしてそれを裏づけるかのように、自民党の下村幹事長代行が文部科学相であった2013~14年に、加計学園の当時の秘書室長から、後援会の政治資金パーティー券の購入代金として現金計200万円を受け取っていたことが問題視されている。

 こういうことを言うと関係者から怒られるかもしれないが、特定秘密保護法、集団的自衛権の憲法解釈の変更、安保法制、共謀罪に比べれば、獣医学部の新設というのは小さな問題にすぎない。そもそも、国家戦略特区制度とは、岩盤のような既存の規制にドリルで穴を開けて、国際競争力を持つ産業を育成するための制度である。それが、獣医学部の新設という、国際競争力の強化との関係が不明な取り組みのために矮小化されていることの方が問題である。確かに、日本のペット(犬と猫)の数は増加の一途にあり、現在では15歳以下の子どもの数より多い。それに伴って、獣医の需要が増えていることは想像に難くない。しかし、獣医を増やすのにわざわざ特区を利用する必要があったのかというこそが問われるべきである。

 それが、これほど大きな問題になって内閣支持率に打撃を与えているのは、結局のところ日本国民は「政治とカネ」の問題に対して異常に敏感である、ということなのだろう。思い返してみれば、第1次安倍政権が倒れたのは、当時の農水相であった松岡利勝に、事務所費の不透明な支出の問題、光熱水費の問題、100万円献金の使途不明という問題が覆いかぶさり、最終的に松岡が自殺したことが大きかった。国民は、政策の重要性の高低で内閣の支持・不支持を決めていない。本来、規制を強化または緩和してほしい、あるいは個人や特定の組織を庇護してほしい時には、その必要性とメリットを滔々と政治家に説いて政治家を説得するという努力を払うべきだと国民は考えている。それを不透明なカネの力で一気に片づけてしまおうとする姿勢に国民は反感を覚えるのであり、またその不透明なカネに乗る政治家にも強い不信感を抱くのである。

 この問題を解決するには、e政府が進んでいるエストニアのようにカネの流れを完全にオープンにするか、献金を完全に禁止するかのどちらかしかないだろう。ただ、前者の場合、結局はカネのある人が有利になるという問題は解決しないため、残るのは後者しかない。とりわけ、政治家の意思決定を歪めやすい企業団体献金は禁止するべきである。しかし、見方を変えると、企業団体献金というのは、選挙権を持たない企業や団体が政治的なニーズを政治家に伝達する手段であるとも言える。そこで、これは全くの私案であるが、献金を禁止する代わりに、法人にも選挙権を与えるというのはどうだろうか?もちろん、制度設計には様々な障害が想定される。

 ・法人の1票と個人の1票を同等に扱ってよいのか?
 ・外国人が代表者を務める法人にも選挙権を認めてよいのか?
 ・宗教法人にも選挙権を与えると、政教分離の原則に反するのではないか?
 ・権利能力なき社団には選挙権を与えなくてもよいのか?
 ・企業法人に選挙権を与えるなら、個人事業主にも選挙権を与えるべきではないか?ただしこの場合、事実上個人が2票持つことになり、他の国民との平等性が崩れるのではないか?

 (2)日本は日清戦争後の下関条約によって台湾を併合し、韓国併合に関する条約によって韓国を併合した。欧米列強がアジアやアフリカの諸国を植民地としたのに対し、日本は台湾や韓国を日本の一部にした。そして、欧米列強が植民地から食料や資源を略奪し、植民地に対して自国の製品を大量に輸出し、植民地の人々を過酷な労働環境の下に置いた、つまり一言で言えば植民地を搾取したのに対し、日本の場合は鉄道、道路、水道、ガス、電気などのインフラを整備し、工場を建設し、学校を設立し、教師を育成し、警察制度を確立するなど、当時の日本社会のコピーを台湾と韓国に実現しようとした。もちろん、日本のやり方には是非の議論が当然あるわけだが、注目すべきは戦後の台湾と韓国の反応がまるで違っていることである。

 台湾は、日本統治時代について概ね肯定的な見方をしているようである。事実、台湾に親日派が多いことは有名である。本号では、蔡焜燦の『台湾人と日本精神(リップンチェンシン)』(小学館、2001年)が紹介されている。以下、孫引きになることをご容赦いただきたい。
 台北の鉄筋コンクリート製下水道施設などは、東京市(当時)よりも早く整備され、劣悪な衛生状態を改善することによって伝染病が一掃された。そして、あらゆる身分の人が教育を受けられるよう、貧しい家庭には金を与えてまで就学が奨励された事実を忘れてはならない。

 戦後、台湾経済がこれほどまでに成長した秘密は、日本統治時代に整備された産業基盤と教育にあるといっても過言ではない。同様に、台北の近代化はこうした日本統治時代を抜きに語ることはできないのである。
台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい (小学館文庫)台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい (小学館文庫)
蔡 焜燦

小学館 2001-08-01

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 ところが、これが韓国となると評価が180度変わる。韓国は日帝による支配を何としてでも否定しようとしている。右派で知られる作家・百田尚樹氏は、最近『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社、2017年)という著書を発表した。百田氏は、韓国に元々存在していた文化、風俗、社会制度などを無視して、日本式のやり方を強引に持ち込んだことを詫びている。ただ、本当に謝罪しなければならないのは、教育で韓国の精神を変えられなかったことだと言う。この点で、単に日帝=悪とし、韓国(や中国)に言われるがままに謝罪を続ける左派とは一線を画している。
 日本人は併合時代に朝鮮人に様々なものを教えました。もっともそれらは何度も言ってきたように、朝鮮人が望んだものではないので、彼らにしてみれば「有難迷惑なこと」以外の何ものでもありません。そのことは謝罪しなければならないのは当然ですが、それはひとまず置いておいて、日本人が朝鮮人にいろんなことを教えようと思った動機は、彼らが多くのことを知らなかったからです。文字を知らず、灌漑技術を知らず、近代的農業を知らず、護岸工事を知らず、植林の意義を知らず、ビジネスを知らず等々、だからこそ一所懸命に、それらを教えたのです。

 しかし日本人は一番大事なことに気付きませんでした。それはモラルです。もしかしたら日本人はそうしたものはわざわざ教えなくとも、自然に身に付くと考えていたのかもしれません。前に私は「衣食足りて礼節を知る」と書きましたが、衣食を与えれば礼節を知ることになるだろうと、安易に考えていたような気がしてなりません。
今こそ、韓国に謝ろう今こそ、韓国に謝ろう
百田尚樹

飛鳥新社 2017-06-15

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 明治維新後の日本が西洋の技術を取り入れて急速な近代化に成功したのは、佐久間象山の「東洋道徳、西洋芸術(東洋の精神の上に西洋の科学技術を移入させる)」という言葉の通り、日本人にはベースとなる精神があったからである。日帝時代の日本人は、韓国には儒教という精神的支柱があるから、日本と同じように近代化できると考えたのかもしれない。ところが、実際にはそんな精神的支柱はなかったのである。精神のないところに技術だけを持ち込んだことが、韓国統治の失敗の原因であり、同時に韓国の反発を買った原因なのかもしれない。もっとも、私の関心は、儒教国であるはずの韓国になぜ精神的な支柱が存在しなかったのかという点にある(この点は現在の中国も同じである)。これについては引き続き考察を続けたい。

 もう1つ、韓国がこれほどまでに日本に対して反発しているのは、実は裏に中国がいて、日韓を分断してアメリカの影響力の低下を狙っていることも考えられるが、それ以上に「『韓国オリジナル』というものがないことへの強烈なコンプレックス」の表れなのではないかと思う。朝鮮半島は長らく中国の属国であり、何もかもを中国に依存してきた。つまり、オリジナルのものを持つことを許されなかった。そこに、日帝がさらに様々なものを持ち込んだため、韓国の怒りは頂点に達してしまったというわけである。最近、韓国が自国に起源があると主張しているものは「ウリジナル」と呼ばれ、テコンドー、剣道、相撲、サッカー、茶道、端午の節句などが該当する。果てはメソポタミア文明やインカ文明、西洋文明も韓国が起源であり、孔子もイエスも韓国人だと言い出している。ウリジナルは、韓国オリジナルがないというコンプレックスの裏返しである。

 私は台湾の歴史のことはよく解らないのだが、日本に関して言えば、日本も外国に多くを依存しながら自国の文化を構築してきた国であり、その意味では韓国と同じく、オリジナルに乏しい。しかし、日本が韓国のようにヒステリックでないのは、日本が特定の国に属してその国に抑圧された歴史を持たないからであろう。だから、反動としてオリジナルなものに対する希求を抱くこともなかった。むしろ、日本はいつの時代にも外国に開かれていた。鎖国政策をとっていた江戸時代でさえも、近年の研究によれば外国に対して比較的オープンであったことが解っている。こうした背景が、日本人が日本オリジナルのものにそれほど執着しなかった要因と考えられる。先ほど、明治時代の日本には基盤となる精神があると書いたが、その精神も、諸外国の文化や価値観などの混合から醸成されたものである。それでよしとする寛容さが日本人にはあった。

 (3)高齢者の割合が増えてくると、いわゆる「シルバー・デモクラシー」に陥りがちである。そこで、若者、特に子ども向けの政策を充実させようという動きが見られる。その1つが「子ども保険」である。子ども保険とは、小泉進次郎・農林部会長ら自民党の若手議員による「2020年以降の経済財政構想小委員会」が提唱しているもので、保育や幼児教育を無償にすることを目的としている。財源としては1兆円ほどが必要と試算されている。その財源を確保するために、教育国債を発行する、現在の社会保険料に上乗せする、などの案が浮上している。

 子どもを持つことが「保険事故」に相当するのかという議論にはここでは立ち入らない。1兆円の財源確保の手段として、私は信用保証協会の代位弁済を大幅に減らすことを提唱したい。信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受ける際、「信用保証」を与えることで、資金調達を支援する。仮に中小企業が債務を返済できなくなったら、信用保証協会が代わりに債務を返済する。これを代位弁済と呼ぶ。日本では代位弁済の額が年間約1兆円に上り、その財源は国民の税金である。これは、中小企業の数が日本の5倍近いアメリカの約10倍である。代位弁済とは、簡単に言えば、潰れかけの中小企業に税金を突っ込んで延命を図ることである。そんな形で市場競争を歪めるよりも、未来ある子どもに投資した方がよっぽど賢明であると思う。

 子どものためのもう1つの政策が「高等教育の無償化」である。本号には、日本維新の会・丸山穂高議員と、評論家・池田信夫氏の対談が掲載されている(「大学の無償化は是か非か」)。高等教育の無償化に必要な財源は、文部科学省の試算によると、大学の無償化だけで3.1兆円、他も合わせると5兆円になるそうだ。この規模の財源を確保するのは至難の業である。

 私はここで、大学で学び直す社会人を増やし、彼らに費用を負担してもらうことを提案したい。経営学者のピーター・ドラッカーは、これからますます増加する知識労働者は、自らの資本である知識を常に最新のものに保つために、継続学習に取り組まなければならないと様々な著書の中で繰り返し主張している。そして、継続学習の場として、大学が今後非常に重要な役割を果たすと述べている。『ポスト資本主義―科学・人間・社会の未来』(岩波新書、2015年)の中では、ドラッカーは日本の大学の問題点を次のように指摘している。
 他のいろいろな面で、日本は新しく生じてきたニーズに応える体制になっていない。例えば教育の分野では、高学歴者のための継続学習機関として大学を発展させる必要が十分認識されていない。日本の高等教育は、いまだに成人前かつ就職前の若者の教育に限定されている。そのような体制は、21世紀のものではない。19世紀のものである。
ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)ポスト資本主義――科学・人間・社会の未来 (岩波新書)
広井 良典

岩波書店 2015-06-20

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 2013年の調査によると、25歳以上の大学への入学者の割合は、OECD加盟国の平均が20.6%であるのに対し、日本はたった2.7%と非常に低い。原因としては色々考えられるだろうが、日本企業の悪しき伝統である長時間労働が、社会人の学び直しの機会を阻害していることは容易に想像できる。現在、安倍政権が取り組んでいる働き方改革が功を奏し、残業の抑制や週休3日制などが定着すれば、働きながら大学で学ぶことを望む社会人は増えると思う。

 OECD並みの水準とまではいかなくとも、仮に25歳以上の大学への入学率が2.3%増えて5%になったと仮定しよう。日本の労働力人口は2016年時点で6,648万人であるから、大学に入学する社会人は約153万人増える。社会人が大学を卒業するまでに要する年数を、若者と同じく4年とすると、毎年の社会人学生は約612万人増加することになる。彼らが負担する授業料を年間50万円に設定すれば、年間の授業料収入は約3兆円上乗せされ、大学の無償化に必要な財源をカバーできる。丸山穂高議員は、社会人学生も無償にするべきだと記事の中で主張していたが、私はお金のある社会人からお金のない若者への再分配を推進するべきだと考える。社会人学生が増えれば、当然のことながら教える側の人間も増やさなければならない。これは、現在就職先がなくて困っているポスドクに相当数のポストを用意できることを意味する。



  • ライブドアブログ
©2012-2017 free to write WHATEVER I like