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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 ブログタイトルに、oasisの往年の名曲『Whatever』を入れてみた。

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マネジメント・フロンティア
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こぼれ落ちたピース
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◆個人事務所「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ


(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

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(監事を務めています)

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(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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2017年08月18日

『ブロックチェーンの衝撃(DHBR2017年8月号)』―ネットワークは分散型だが中央集権的なプレイヤーが出現すると思う、他


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2017年8月号 [雑誌]DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2017年8月号 [雑誌]
ダイヤモンド社 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2017-07-10

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 (1)ブロックチェーンの技術的な側面については私は全くの素人なので、今回の記事は本号を読んだ雑感レベルにとどまることをご容赦いただきたい。本号を読むまでは、ブロックチェーンとは現在国家が管理している通貨に代わるもの、といったぐらいのイメージしか持っていなかった。しかし、実はブロックチェーンはそれ以上のことが実現可能であることが解った。
 アクセス権管理では、たとえば、以下のような仕組みが実現されるかもしれない。ユーザーが利用料金や保証金などを支払うと、ブロックチェーン上のスマートコントラクトにより、自動車へのアクセス権が付与される。ユーザーが利用可能な時間帯に車の前に立つと、車からブロックチェーンに照会がかけられ、認証されるとロックが解かれる。
(鳩貝淳一郎「仮想通貨からスマートコントラクトまで社会を変える理念 ブロックチェーン:ビットコインを動かす技術の未来」)
 「スマートコントラクト」については、別の論文でもっと詳しい説明がある。
 事前に取り決めておいた契約条件が満たされれば、支払いも、通貨もしくはその他の資産の譲渡も自動的に行われる。たとえばスマートコントラクトによって、納入業者から発送された荷物が届くと同時に支払いを行う、というケースが考えられる。特定の商品を受け取ったという合図を受取手の企業がブロックチェーン経由で送ることもできるし、その商品にGPS機能を持たせて移動するごとに自動で位置情報をアップデートさせ、最終的にその情報が支払い手続きのスイッチとなるようにすることも可能だ。
(マルコ・イアンシティ、カリム・R・ラカニー「技術普及の4フェーズから読み解く ブロックチェーンと企業戦略」)
 これは私の解釈だが、従来は製品・サービスの流通と資金の決済がバラバラに行われていたのに対し、ブロックチェーンを活用すると両者を同時に実施できるようになる、ということだと思う。ただし、資金の決済はアルゴリズムで自動的に実施できるものの、製品・サービスの流通には人手が介入することが多い。つまり、品質にばらつきが生じる恐れがある。そこで、品質を平準化するために、AI(人工知能)を活用しようという発想が出てくる。
 AIによる安定した高品質サービスの提供は、スマートコントラクトが、金融や情報のやりとり以外の領域に展開するための、極めて重要な要因であると思われる。AIは、我々に、知識やスキルをコモディティ化し、そこへのアクセスを可能とするのである。

 再び運転技術を例に取る。これは1つのスキルであり、それを職業とする人々は、このスキルを車両というインフラとともに提供し、利用者の移動を実現することで価値化する。しかし、人が提供するサービスには、品質のばらつきがある。AIで実現する自動走行は、このスキルにアクセスできない個人に、高品質なスキルへの安定したアクセスを提供することで、移動手段の提供や事故などの防止という貢献をする。
(北野宏明「能力のコモディティ化が切り拓く新市場 ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり」)
 従来の取引は次の通りである。企業の工場のラインで、ある部品の在庫が発注点を下回ったとすると、購買担当者が仕入先に部品の発注を行う。仕入先の作業員は、フォークリフトなどを使って必要な部品の数を工場の在庫からピックアップし、物流業者のトラックに載せて企業に納品する。企業側は検収を行い、検収がOKであることを仕入先に知らせると、仕入先は請求書を発行する。請求書を受け取った企業は、金融機関で代金の支払いを行う。ここで、この企業と仕入先、さらに物流業者がブロックチェーンとAIを活用したとしよう。

 この企業の工場では、部品の在庫量の情報がブロックチェーンと連動している。在庫が発注点を下回ると、ブロックチェーンが自動的に仕入先に対して部品を発注する。仕入先の工場ではAIロボットが導入されており、注文を受けると、ロボットが必要な量の部品を自動的にピッキングする。同時に、注文情報は物流業者のブロックチェーンとも共有されていて、他の荷主企業の荷物量、納入期限などを勘案し、何時にその仕入先の工場に自動運転トラックを到着させるかを決める。物流業者の自動運転トラックが仕入先の工場に到着する頃には、積載する部品の準備が完全に完了しており、スムーズに積み荷が行われる。後は、自動運転トラックが発注企業に部品を納品する。検品は、発注先企業のロボットが自動的に行う。検収が完了すると、その情報がブロックチェーンに伝えられ、決済が一瞬で完了する。これが近未来の姿なのかもしれない。

 ブロックチェーンは分散型のネットワークが前提だが、その将来は次のように予測されている。
 おそらく、AIによるサービスの高品質化と安定性、効率化と(※原文ママ)追求する巨大プライベートブロックチェーン群と、サービス品質により大きなゆらぎを許容することで、人が直接サービスすることの味わいや面白さを打ち出すDAO(※非自律型中央集権型企業:De-centralized Autonomous Organization)群、さらには、ニッチなAIサービスを展開するDAO群が並存し、多様なブロックチェーンのサービスが生み出されるはずである。
(北野宏明「能力のコモディティ化が切り拓く新市場 ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり」)
 興味深いことに、分散型のブロックチェーンを集権的に活用する巨大プライベートブロックチェーン群が登場すると予測されている。私は、これはかなり可能性が高いシナリオだと思う。

 インターネットは分散型のネットワークとして広がったが、結局現在のインターネットの世界を支配しているのは、googleやamazon、facebookなど一部の巨大企業である。また、歴史をさかのぼれば、望ましい政治形態は独裁でも専制でもなく、分散的な市民が知恵を統合する民主制だとされてきたが、現在の世界を見ると、結局大きな政治力を持っている国は独裁制か専制主義である。世界中にプレイヤーが分散した時、彼らが自由気ままに振る舞ったのではシステムが崩壊してしまう。各地のプレイヤーが一定のルールにのっとって行動できるよう、オーケストラの指揮者に相当する力の強い者が必要となる。指揮者の力は、世界中のプレイヤーが分散的であればあるほど、強力でなければならないという逆説が成り立つ。

 話は変わるが、ブロックチェーンは改竄が難しいと言われる。ブロックチェーンと言うぐらいであるから、ブロックチェーンとはブロックのチェーン(鎖)である。各ブロックには、過去の「トランザクション」のデータが全て入っている。トランザクションとは、例えばAさんがBさんに10万円送金する、といった取引のことである。ブロックには「ヘッダ」と呼ばれる部分があり、①トランザクションの圧縮データ、②直前のブロックのヘッダの圧縮データ、③ナンスという3つから成り立っている。そして、①+②+③が一定の値を下回るように計算しなければならない。①と②の計算は比較的容易だが、③の計算が非常に難しいとされる。③が求められればヘッダが完成し、そのブロックは直前のブロックと結合することができる。

 ここで、nというブロックを改竄しようとする者がいたとする。つまり、トランザクションを自分の都合のよい情報に書き換えようとしたとする。すると、トランザクションの変化によって、ブロックnのヘッダのうち、①トランザクションの圧縮データが変化するため、③ナンスの値を再計算しなければならない。前述の通り、ナンスの計算は非常に難しい。仮に、運よく条件を満たすナンスが見つかっても、ブロックnのヘッダ情報はブロックn+1における②直前のブロック(つまりブロックn)のヘッダの圧縮データを変化させる。よって、今度はブロックn+1の③ナンスの値を再計算する必要がある。この再計算が際限なく続くため、ブロックチェーンの改竄は困難と言われる。

 ただ、技術に疎い私が言うのもおこがましいが、改竄は「不可能」ではなく「困難」であるとされている。インターネットの世界には様々な暗号技術がある。新しい暗号技術が開発されるたびに、「今回の暗号を見破るのは相当困難だ」と言われてきた。ところが、何十年か経つと、暗号を解読する人が現れるのである。だから、ブロックチェーンも決して安心はできないと思う。

 (2)本号の特集からは外れるが、スティーブン・ヘイダリ・ロビンソン、スザンヌ・ヘイウッド「期待通りの成果を生み出すために 組織改編を成功させる5つのステップ」という論文があった。その5つのステップは以下の通りである。

 ①損益計算書を作成する
 ②現在の強みと弱みを知る
 ③多くの選択肢を検討する
 ④「配線・配管」を正しくする
 ⑤スタートを切り、学習し、軌道修正する

 ただ、個人的には、①損益計算書の作成が最初に来るのはやや不自然であり、③選択肢の検討の段階で、それぞれのプランによって想定される損益計算書を作成するのが筋ではないかという気がした。また、⑤はExecution as Learningと呼ばれるものであるが、組織はITと違って、バグが見つかったらその都度アップデートすればよいという性質のものではない。一度組織を変更してしまうと、微修正であってもそれを再度変えることは非常に手間とコストがかかる。

 業績が伸び悩むと、組織改編に乗り出す企業は少なくない。半年ごとに全社の組織がコロコロと変わる企業は要注意である。組織改編をすると、経営陣は何か大きな改革をしたような気分になってしまうようである。しかも、組織改編は組織図を書き換えればよく、安上がりの改革だと思われている節がある。しかし、実際には、組織改編によって社員の権限や責任の範囲が変わるため、新しい役割に慣れるのに時間がかかる。また、社員の権限・責任の変化に伴い、社内システムのマスターテーブルや権限設定も見直す必要がある。システムを変更すれば、当然テストのための費用が発生する。さらに、特に営業担当者は、組織が変わったことをいちいち顧客に説明しなければならない。組織改編は決して、安上がりの改革ではないのだ。

 組織改編そのものが目的にならないようにするためには、やはり組織設計の定石を押さえるべきである。企業は、顧客に対して価値を提供するために存在する。まず、自社のターゲット顧客は誰なのか、その顧客に対してどんな価値を提供するのかを明確にする。その上で、その提供価値を実現するには、社内でどのようなビジネスプロセスを整備するべきかを検討する。加えて、そのビジネスプロセスが適切に機能しているかを俯瞰的にチェックする機能も必要である。これがマネジメントであり、ビジネスプロセスと同時にマネジメントプロセスも設計しなければならない。プロセスがはっきりしたところで初めて、どこまでの範囲の業務を1人の社員に担当させるのか、どこまでの範囲の業務を1つの組織としてまとめるのが適切かを熟慮することになる。

 個々の社員の仕事の範囲を決定するには、それぞれの社員の能力や特性、モチベーションの源泉を考慮し、彼らが強みを伸ばし、自律的に仕事ができるようにしなければならない。組織の単位を決める場合、1つの組織を小さくすれば、個々の組織の凝集性は高まる反面、周囲の組織との壁が多くなり、組織間連携が難しくなる。逆に、1つの組織を大きくすると、組織間の調整といった不毛な作業は減少するが、人数が多くなるがゆえに、組織の求心力を保つのが難しくなる。こうした点を念頭に置いて、最適な組織サイズを決定しなければならない。このように、組織設計は非常に難しいのである。そう考えると、組織はおいそれと変えられるものではない。


2017年05月10日

『知性を問う(DHBR2017年5月号)』―AI(人工知能)にできないことは「意識」/マーケティングとイノベーションの二項混合?


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 5 月号 [雑誌] (知性を問う)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 5 月号 [雑誌] (知性を問う)

ダイヤモンド社 2017-04-10

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 ※私が愛してやまないMr.Children、デビュー25周年おめでとうございます。いつも心に沁みる名曲を届けてくれてありがとうございます。これからもミスチルを応援し続けます!

 (1)2015年11月号以来のAI(人工知能)の特集(同号については、以前の記事「『人工知能(DHBR2015年11月号)』―AIは自分で目的を設定できるようになると思う、他」を参照)。AIの急激な発達によって、人間のみが可能でAIには不可能なこととは何かが盛んに議論されるようになった。AIにできないことの1つ目として、「自分で課題を設定すること」が挙げられる。AIはあらかじめ人間が設定した課題について、大量のデータとアルゴリズムを活用して解を導くことはできるが、AI自身が解くべき新しい課題を発見することはできないというわけである。
 あまり語られないことだが、課題解決には大きく言って2通りある。1つが病気を治し健康にするようなタイプの課題解決(タイプA)。もう1つがあるべき姿(ゴールイメージ)から定める必要があるタイプの課題解決(タイプB)である。(中略)

 タイプBの場合の課題解決はまったく異なる。たとえば、芸能人を目指すある若者がマツコ・デラックスさんのようなチャーミングで、他の誰とも異なる味と存在感のある司会者になりたいと思ったとする。この場合、明らかに答えは、マツコさんのような体型になることでもなければ、マツコさんのような立ち居振る舞いをすることでも、ソフトでスパイシーな発言をすればいいわけでもない。そもそも真似をしようとする段階で間違っている。誰とも異なる存在になれないからだ。
(安宅和人「AI×データ時代に人間が生み出す価値とは 知性の核心は知覚にある」)
 ただ、以前の記事でも少し書いたが、この手の課題解決はAIにもできるようになるに違いないと私は考えている。新しい課題を発見するためにはいくつかの手法がある。1つ目は否定である。あるシステム(系)で前提とされていることを全て否定してみて、そこから新しいシステム(系)を構築する。ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学のような関係である。2つ目は空白を見つけることである。引用文の例で言えば、最近売れている芸能人の属性や特徴を洗い出して、我々がマーケティング戦略を立案する際に作成するポジショニングマップや戦略キャンバスのようなものを構想し、まだ誰も目をつけていないスイートスポットを発見する。

 3つ目は、2つ以上の異質な情報を組み合わせることである。安宅氏は、機械学習の基本を「分ける」ことと「線引きすること」と述べているが、AIには情報をつなぐことも可能である。AIが文章を書く時、登録されている単語を自由自在に組み合わせて、文章の候補を大量に作成する。その中で、文章として成立しているもの、つまり、文法的に誤りのないものと、前後の文の意味が通じるものを選択する。このアルゴリズムを応用すれば、(素人的考えだが、)AIが新しいアイデアを創造することも不可能ではないように思える。しかも、人間が組み合わせることのできる情報の量には限りがあるのに対し、AIは際限なく組み合わせを試すことができる。

 (※)AIの専門家であるマーガレット・ボーデンの考えを借りると、創造性は3つに分類できるという。①知られたもの同士をつなげ知らない組み合わせにする(統合型)、②既存の枠組みの中で試されていない「空白地」を探す(探索型)、③考えの枠組みや定義そのものを変えて本質をとらえ直す(転移型)(『週刊ダイヤモンド』2017年4月22日号より)。

週刊ダイヤモンド 2017年 4/22 号 [雑誌] (「孫家」の教え)週刊ダイヤモンド 2017年 4/22 号 [雑誌] (「孫家」の教え)

ダイヤモンド社 2017-04-17

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 AIにできないことの2つ目として、「感情を用いる対人関係の仕事」が挙げられる。2015年11月号の論文には次のような記述があった。
 マカフィー:はい。3つのスキル分野では、人間のほうがまだはるかに優れているからです。(中略)2つ目の領域は、感情、対人関係、思いやり、育成、コーチング、意欲喚起、統率など。何百万年もの進化を通じて、私たちはボディランゲージを読み解くのが得意になりました。
(エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー「【インタビュー】「グレート・デカップリング」という現実 機械は我々を幸福にするのか」)
ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 11 月号 [雑誌]ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2015年 11 月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2015-10-10

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 サービス業などの顧客接点で働くスタッフの仕事は、感情を活用する仕事であるから、AIでは代替できないと言われる。しかし、私はこの分野にもやがてAIが進出してくると予想している。A・R・ホックシールドは著書『管理される心─感情が商品になるとき』(世界思想社、2000年)の中で、乗客に微笑むキャビンアテンダントの心がいかに管理されているかを指摘した。顧客の気持ちを温めるキャビンアテンダントだけではない。債務者の恐怖を煽る集金人までも、感情をコントロールされているという。心が管理されているということは、心がプログラミングされていることに等しい。ということは、AIがその役割を担っても不思議ではない。

管理される心―感情が商品になるとき管理される心―感情が商品になるとき
A.R. ホックシールド Arlie R. Hochschild

世界思想社 2000-04

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 先ほどの引用文を読むと、ホックシールドが感情労働者と名づけた人々だけでなく、マネジャーやリーダーの仕事もAIにはできないと主張しているように読める。ところが、2015年11月号には、「考える機械がツールからチームメイトに変わる あなたの上司がロボットに代わったら」(ウォルター・フリック)という論文がある。ロボットである上司は、アルゴリズムを用いて部下の業績を評価する。その際、部下は評価結果が正確に算定されたものであるにもかかわらず、反発を覚える。これは無理もないことだ。ところが、ロボットを人間に似せる、つまりロボットに声を出させたり、人間の身体に近い構造にしたりすると、人間側の反発が和らぐのだという。

 AIにできない3つ目のことは「意識」である。2017年5月号には次のように書かれている。
 意識とは、モノやコトに注意を向ける働きと、自分は自分であると認識できる自己意識である。自分はいま、見ている、触っている、喜んでいる、記憶を思い出している、自分のことを考えている、といったことを感じる働きだ。意識は、知、情、意、記憶と学習の全体を主観的に感じる働きだと考えられる。
(前野隆司「AIに実現できない心の領域 「心の質感」が創造性の源泉になる」)
 率直に言って、この論文を読んでも意識とは何なのか判然としなかった。私が無知だと言ってしまえばそれまでなのだが、あながち私の無知のせいだけにはできない事情もある。何せ、現代の最新の脳科学をもってしても、意識とは何か全く解明できていないのだという。それに、意識は2000年以上も前から、何十人、何百人もの大哲学者が寄ってたかって洞察を試みたというのに、未だに見解の一致を見ない領域でもある。

 とはいえ、私なりに少し考えてみた。例えば、日中、何も用事がない状態で、ポンと渋谷の駅前に放り出されたとする。人間であれば、渋谷の景色をぐるぐると見回しながら、何かできそうなことを探すだろう。駅前の地図の前でガイドブックを片手に困った顔をしている外国人がいたら、声をかけて道を教えてあげる。渋谷をちょっと歩いて紀伊国屋書店に入り、そういえば前から読みたいと思っていた本を偶然見つけてそれを購入し、近くのスターバックスでゆっくり読む。あるいは、BUNKAMURAに立ち寄って、何か面白そうな公演がないかチェックする。また、仮にその人がラーメン好きであれば、新しいラーメン屋が開店していないか見て回るかもしれない。

 これらの行動は、渋谷という外界から大量に入ってくる情報と、自分自身に関する情報を意識することで可能になる。その大量の情報をどのように意識し、意識した情報から何らかの行動目標を設定するプロセスがまだよく解っていないのである。道案内に特化したAI、書籍情報をくまなく蓄積することに特化したAI、公演やラーメン店の情報を探索することに特化したAIであれば、個別の行動をとることはできる。ところが、何も条件を設定されていない状態でAI搭載ロボットを渋谷の駅前に放り出しても、そのロボットには何もできない(文字通り動かない)に違いない。

 (2)本ブログで何度も書いたように、大国(アメリカ、ドイツ、ロシア、中国)は二項対立的な発想をする。つまり、二者択一の意思決定を下す。本号の論文「矛盾を受け入れる動的均衡のマネジメント リーダーは「二者択一」の発想を捨てよ」(ウェンディ・K・スミス、マリアンヌ・W・ルイス、マイケル・L・タッシュマン)は、論文のタイトル通り、リーダーに対して二者択一的な発想から抜け出すことを勧めている。だが、欧米人(+中国人)が二項対立に直面した時、ヘーゲルが弁証法で説いたアウフヘーベン(止揚)はほとんど起こらないのではないかと私は見ている。どんな場面でも、対立する二項のうちから必ず一方を採用しなければならない。そのどちらも採用しようとすれば、二項の間で小刻みに”反復横跳び”を繰り返すしかない。
 このように二者択一から両立へと思考を変えるには、対立し合う要求を長い目で満たすために、短い期間でフォーカスを切り替えていくことが求められる。相反する要求の間で振れ幅を大きく取るのではなく、成長と持続可能性を実現できるように意図的に小幅なシフトを繰り返さなければならない。
(ウェンディ・K・スミス、マリアンヌ・W・ルイス、マイケル・L・タッシュマン「矛盾を受け入れる動的均衡のマネジメント リーダーは「二者択一」の発想を捨てよ」)
 日本には、二項対立に陥った時に、両者を融合する「二項混合」という文化がある。その最たる例が「神仏習合」だと私は思っている(以前の記事「義江彰夫『神仏習合』―神仏習合は日本的な二項「混合」の象徴」を参照)。と、ここまで書いて、マーケティングとイノベーションという、しばしば組織内で対立するこの2つの活動も、「二項混合」しなければならないのではないかと考えるに至った。以前の記事「戦略を立案する7つの視点(アンゾフの成長ベクトルを拡張して)(1)(2)」で、マーケティングとイノベーションを分けて整理したが、これを混合させるとなると、多分日本中でほとんど誰も考えていないような、なかなかの一大事である。

 本号には、1つのヒントがあった。破壊的なイノベーション(ここで言う「破壊的」とは、クリステンセンの言う「破壊的イノベーション」のそれではなく、もっと単純に、「製品・サービスや業界の構造を抜本的に変更する」といった意味合いである)によって既存製品が取って代わられる時、いきなり既存製品が駆逐されるのではなく、既存製品と破壊的なイノベーションのハイブリッド型製品が生まれるという。トヨタのプリウスがその最たる例だ。ただし、ハイブリッド型製品は、破壊的なイノベーションに移行するまでの”つなぎ”にすぎない点には注意が必要である(ネイサン・ファー、ダニエル・スノウ「破壊的イノベーションに対抗する プリウス式ハイブリッド戦略」)。

 今回の記事では1つの方向性しか示すことができないが、マーケティングが市場を創ること、イノベーションが市場を破壊することであるならば、両者の二項混合は「創りながら壊す」という経営になりそうである。具体的には、主力製品・サービスに注力しながら、同時にその製品・サービスに取って代わる革新的な技術や新しい製品カテゴリを開発することである。前掲の「戦略を立案する7つの視点(アンゾフの成長ベクトルを拡張して)」の記事中の図で言えば、①リピート購入戦略、②市場シェア拡大戦略と⑥代替品開発戦略を同時に追求することを意味する。

 イノベーションのセオリーに従えば、以前の記事「『イノベーションのジレンマ(DHBR2016年9月号)』―イノベーションの組織は既存組織と分けるべきか否か?」でも書いたように、①リピート購入戦略、②市場シェア拡大戦略と⑥代替品開発戦略は利害が正面から対立するため、組織を分けるのがベストである。しかし、日本流の二項混合経営では、敢えて両部門を分けないという選択肢があり得る。そういう日本企業が出てきたら面白いことになりそうな気がする。同じ部門内で、あるチームは主力製品・サービスを一生懸命売ろうとしている。その一方で、別のチームはその主力製品・サービスを陳腐化するイノベーションを生み出そうと躍起になっている。その2つのチームが、同じターゲット顧客をめぐってしのぎを削っているようなイメージである。


2016年08月24日

【ドラッカー書評(再)】『新しい現実』―AIがこれだけ民生化されてきたということは、軍事利用の研究はもっと進んでいる?、他


[新訳]新しい現実 政治、経済、ビジネス、社会、世界観はどう変わるか (ドラッカー選書)[新訳]新しい現実 政治、経済、ビジネス、社会、世界観はどう変わるか (ドラッカー選書)
P.F.ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2004-01-08

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 本書の原著が発表されたのは1989年である。ドラッカーは本書の中でソ連が近々崩壊すると述べているが、果たして2年後の1991年、ソ連は本当に崩壊した。そのため、本書はソ連の崩壊を予知した1冊だと言われることがある(もっとも、当時ソ連の崩壊を予想していたのはドラッカーだけではなかったが)。ドラッカーは、オーストリア=ハンガリー帝国が民族主義の台頭によって消滅したことを引き合いに出しながら、ソ連に分裂の兆候が見られるとした。そして、その言葉通り、ウクライナで民族運動が高まり、同国が独立を宣言すると、堰を切ったように他の国家も独立を宣言し、ソ連は約70年の歴史に終止符を打つことになった。

 (1)
 第二次大戦後、世界中の非西洋諸国が日本の明治維新をモデルとした。自らの支配のもとに西洋化を進めた。反植民地主義とは、植民地化以前に戻ることではない。イランにしても、18世紀のペルシャに戻ろうとはしない。目指すのは、イスラムの宗教と価値観とともに、西洋の技術、産業、軍事力をもつ近代イランである。これは、1870年代の日本が、1000年前の奈良時代や平安時代の天皇制とともに、イギリス流の議会政治をもとうとしたことと、さほど変わらない。
 ドラッカーは本書の中で「多元社会」という言葉を多用している。これからの世界は中心らしき中心がなくなり、価値観が多様化するというわけである。しかし、私の(狭い)見立てによると、どうやら大国間、とりわけ米独露中4か国の対立というのはなくなっていない、いやむしろ対立が深刻化している(大国間の二項対立については、以前の記事「山本七平『存亡の条件』―日本に「対立概念」を持ち込むと日本が崩壊するかもしれない」、「『安保法制、次は核と憲法だ!/「南京」と堕ちたユネスコ・国連/家族の復権(『正論』2015年12月号)』」を参照)。

 イデオロギーという言葉は死語のように扱われるが、私はこの4か国の中では未だにイデオロギーが生きていると思う。では、大国の間に挟まれた小国(日本を含む)はどうすればよいか?1つは、対立する大国の一方に味方し、その国に自国を庇護してもらうことである。しかし、この戦略はシンプルではあるものの、その分リスクも大きい。なぜならば、仮に大国間の対立が激化し、自国が味方していた大国が敗れた場合、それは自国の滅亡を意味するからである(大国自身は、敗れたとしても体力があるので再び復活できる。ロシアがそのよい例である)。

 もっとも、現代においては大国同士が衝突すれば第三次世界大戦に突入してしまうと容易に想像できるため、大国が正面からぶつかり合う可能性は限りなく低い。その場合、大国は小国に代理戦争をさせる。朝鮮半島では北朝鮮と韓国の間で緊張が高まっている。中東では、親ロシア派の国と親アメリカ派の国が衝突している。小国はこうした対立によって国力を消耗する。一方、大国は小国同士が争うことで最も多くの利益を得ることができる。大国は自らを傷つけることなく、対立構造を維持したまま軍需産業を伸ばし、経済を成長させる。

 こういう大国の狡猾な戦略に飲み込まれないようにするための戦略が、2つ目の「ちゃんぽん戦略」である(以前の記事「千野境子『日本はASEANとどう付き合うか―米中攻防時代の新戦略』―日本はASEANの「ちゃんぽん戦略」に学ぶことができる」を参照)。つまり、大国の一方に過度に肩入れするのではなく、双方にいい顔を見せながら、両方のいいところ取りをする。言い変えればご都合主義、日和見主義である。大国から見れば、その小国が何を考えているのか解りにくく、深く手を突っ込むことが難しくなる。しかし、大国の間にある国であるから、双方ともその小国と関係を完全に絶つわけにはいかない。こういう絶妙なポジショニングを創出する。

 日本は明治維新の際、憲法はドイツに、民法はフランスに、議会政治はイギリスに倣った。いずれも、当時激しくつば迫り合いをしていた帝国主義国である。しかも、日本の長年の伝統の上に上手く接合させた。まさに「ちゃんぽん」に他ならない。日本が植民地にならずに済んだのは、単に日本が西洋化にいち早く成功しただけでなく、自国を多元化させて列強が手を出しにくい状況を創り出したことが大きい。引用文にあるように、イランが日本の真似をしているならば、自国のイスラーム文化の上に、アメリカとロシアを混ぜこぜにすることが重要ではないかと考える。

 現在の日本は、アメリカに過度に依存している。たまたま、地政学的に朝鮮半島が資本主義と共産主義の対立の境目にあたるため、対立は朝鮮半島で発生し、日本が影響を被ることはなかった。しかし、将来的に朝鮮半島ならびに世界情勢がどう変化するかは予測できない。予測はできないものの、今の日本がなすべきことはある。それは、右派は嫌がるかもしれないが、中国・ロシアとの距離を縮めることである(以前の記事「『非立憲政治を終わらせるために―2016選挙の争点(『世界』2016年7月号)』―日本がロシアと同盟を結ぶという可能性、他」を参照)。

 (2)
 おそらく、さらに重要な原因として、戦略なるコンセプトが成立しなくなったことがある。多様な状況があり、多様な選択がある。特定の敵に対し、特定の軍事行動を行なうための計画、訓練、整備、指揮というものはありうる。しかし、あらゆる種類の敵に対し、あらゆる種類の軍事行動を行なうための計画、訓練、整備、指揮というものはありえない。
 ドラッカーは、現代において軍事力は著しく不経済になったと述べている。そして、各国が軍事的優位を保持・獲得しようとしないことが共通の利益であることに合意できれば、軍縮が進むだろうと予測する。引用文のように、想定すべき軍事行動が多すぎて、巨大な軍を保有することの意義が疑われ始めていることも、軍縮へのインセンティブになっている。

 しかしながら、ドラッカーの予測に反して、軍縮は一向に進んでいない。それどころか、世界の軍事費は冷戦終結時から倍増している(BLOGOS「冷戦終結時から倍増した世界の軍事費」〔2015年10月9日〕を参照)。さらに恐ろしいのは、近年のAI(人工知能)の発達である。従来のAIは(と言っても、もう何十年も前の話だが)、意思決定の局面におけるあらゆる選択肢を事前に予測し、それぞれの選択肢の経済的効果を計算して、最も効用が高い選択肢を絞り込む、というアプローチをとっていた。だが、これではコンピュータに将棋をさせるだけで、とんでもない規模のコンピュータが必要となり、しかも計算に非常に時間がかかってしまう。

 そこで、現在のAIは異なるアプローチを採用している。まず、過去の将棋の棋譜を大量にコンピュータに記憶させる。そして、特定の局面における指し手のパターンを発見させる。AIが記憶する棋譜の量が多くなればなるほど、AIの指し手の精度が磨かれ、勝利の確率も上がる。それでも長らくAIは人間に勝てなかったのだが、逆に最近は人間がAIに勝つことが難しくなっている。AIは、ある局面において選択し得る指し手のうち、人間ならば選択しないであろう指し手を敢えて選択することがある。それをAIがどのタイミングでやってくるか解らないため、棋士は混乱する。

 将棋に比べると囲碁は碁盤の目が多く、指し手の数が格段に増えるため、AIが勝つのは当分先のことだろうと言われていた。ところが、グーグルが買収したイギリスのディープマインド社のAIが韓国のプロを打ち負かし、世界に衝撃が走った。しかも、このAIの恐ろしいところは、なぜAIがこの対決で勝てたのか、人間が分析しても解らないという点である。

 民生の場面でこれだけAIが発達しているということは、軍事分野においてはもっと研究が進んでいる可能性がある。周知の通り、アメリカは軍事分野での研究に多額の投資を行い、その成果を民生に転用することで経済成長を遂げてきた。コンピュータもそういう研究成果の1つである。もちろん、ルールが明確に決まっている将棋や囲碁と、無限の軍事行動が想定される戦争では複雑性が異なる。だが、アメリカがお得意のインテリジェンスを総動員して、過去の全戦争をデータ化してAIにつぎ込み、さらに将来的に予想される軍事技術の変化を織り込めば、あらゆる選択肢を検討しなくとも最適解を導き出せるシステムができ上がるのではないだろうか?



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