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企業内診断士に対して、独立診断士の端くれとして期待している3つのこと
【ベンチャー失敗の教訓(第13回)】曖昧で中途半端だったポジショニング

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

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2015年12月09日

企業内診断士に対して、独立診断士の端くれとして期待している3つのこと


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 日本国内において中小企業診断士として登録している人の数は22,544名だそうだ(平成26年4月1日付)。診断士という資格は中小企業の経営コンサルティングを期待されているのだが、実際には登録者数の約7割が企業に勤めたままの「企業内診断士」であると言われる。

 そこで、企業内診断士の知識研鑽、実務従事の場の創出を目的として、診断士の間では様々な活動が行われている。私が所属する(一社)東京都中小企業診断士協会城北支部には、「企業内診断士フォーラム(KSF)」がある(私は僭越ながら、独立診断士の立場からKSFの活動を側面サポートさせていただいている)。城北支部のKSFは評判がよいらしく、最近は他の支部もKSFの取り組みを真似しようとしていると聞いた。

 KSFは原則として偶数月の第4火曜日に中央区で定例会を開催している。定例会では、実務従事案件の紹介、企業診断事例の発表、その他診断士活動に関する討議などを行っている。10月の定例会では、企業内診断士がいずれは独立を目指すことを見据え、「企業内診断士がKSFや城北支部に対して望むこと」というテーマでディスカッションを行った。その中で出た主に3つの意見について、私が独立診断士として企業内診断士に望むことを述べてみたいと思う。

 (1)診断士も他の士業と同じように独占業務がほしい
 診断士は税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、行政書士など他の士業と異なり、法律で定められた独占業務がない。単に、「経営コンサルティングに関する唯一の国家資格」とうたわれているだけである。そのため、独立開業後に苦労する診断士は少なくない。誤解を恐れずに言えば、「もっと簡単に儲けられるように」、診断士にも独占業務がほしいという声は、企業内診断士だけでなく、独立診断士からも聞かれる。せっかく診断士協会という組織があるのだから、その組織力を活かしてもっと政治的に働きかけるべきだ、と主張する独立診断士もいる。

 だが、個人的には診断士に独占業務は必要ないと思う。世の中の多くの中小企業は、独占業務という保護がない世界で日々厳しい競争にさらされている。その中小企業の業績を向上させるためにアドバイスする診断士が、法律でぬくぬくと保護されているのは、どうも矛盾している気がしてならないのである。診断士は企業経営のプロフェッショナルであるとされる。独占業務がなければ儲けられない診断士は、診断士として失格だろう。中小企業の経営者も、そんな診断士が経営の能書きを垂れるのは不愉快だと感じるに違いない。

 (2)企業内診断士が経験を積むために、かばん持ち制度のようなものがほしい
 企業内診断士もコンサルティング能力を伸ばすために、独立診断士と一緒に仕事をしたいと考えている。しかし、勤め先の業務が本業であるため、診断士としての活動に従事できるのは土日ぐらいしかない。そこで、土日に短時間で(できれば自宅で)できる簡単な仕事を企業内診断士のために切り出してもらえるとありがたい、という意見があった。ちょっとした仕事をお手伝いできる「かばん持ち制度」があると嬉しいそうだ。確かに、私も企業内診断士だった頃はほとんど診断士活動ができなかったので、企業内診断士がそういうふうに思う気持ちは解らなくもない。

 だが、いざ独立してみると、別の考えが中心を占めるようになった。まず、自宅でできる仕事を「かばん持ち」とは呼ばない。かばん持ちと言うからには、顧客企業を訪れ、顧客企業と一緒に作業をするべきである。それ抜きにコンサルティングを体感することは不可能だ。そして、顧客企業と接するからには、一定の責任を負ってもらうこととなる。それはすなわち、片手間でできる仕事で済ますのではなく、場合によっては土日を丸々潰してでも一定の成果物を出してもらうことを意味する。そのくらい責任を持ってくれる人でなければ、私も怖くて顧客企業に紹介できない。

 私も一応コンサルティング会社に勤めていたコンサルタントの端くれなのだが、コンサルティング会社は若手の育成システムを「徒弟制度」に例える。だが、弟子だからと言って成長を気長に待ってもらえるわけではない。むしろ、早いうちから高い成果が要求される。作ったパワーポイントの資料の出来が悪いと、目の前で破り捨てられる。顧客企業との討議について行けず黙っていると、こっぴどく絞られる。仮に上司が大目に見てくれたとしても、顧客企業が黙っていない。「こちらは高いフィーを払っているのに、あの人は何もしていない。別の人に代えてほしい」と容赦なく言われる。顧客企業の浮沈がかかっているのだから、厳しくて当然であろう。

 (3)今すぐ独立する予定はなく、勤務先でコンサルティングのような業務もできないのだが、その場合はどうすればよいか?
 将来的には独立を目指すとしても、当面は現在の勤務先で働き続けたいという企業内診断士も少なくない。勤務先の仕事はコンサルティングとは無関係である。また、(2)で登場したかばん持ち制度に参画する余裕もない。その場合、コンサルティングの知識を枯らさずに、KSFや城北支部で活動を継続するにはどうすればよいか?という不安の声が一部の人から上がった。

 そういう企業内診断士に対しては、コンサルティングの知識や能力を磨くということをあまり意識せずに、むしろ今自分が取り組んでいる仕事での専門性を高めた方がよい、とアドバイスしたい。過去の記事でも書いたが、独立すると最初は公的機関の登録専門家になって仕事をすることが多い。登録専門家には、特定の分野で10年程度の経験があることを要求されるケースがほとんどである。海外販路開拓の専門家であれば商社などの実務経験、ものづくりの専門家であれば製造現場の経験といった具合だ。逆に、コンサルティング能力はあまり問われない。

 私などはそういう実務経験がなく、キャリアのほとんどをコンサルティング業務に費やしてきたので、公的機関の専門家に登録することができず苦労した。これから独立する診断士には私の二の轍を踏んでほしくないため、敢えて「今の勤め先に後5年ほど残って、専門性を深掘りするべきだ」と言いたい。専門性を高めるとは、解のパターンを多様化することである。この場合はこうする、あの場合はああするという細かい条件分岐を持つことである。決して、特定の解に固執して、それを一心不乱に磨き上げることではない。中小企業は千差万別であるから、たくさんの引き出しを用意することは必ず後で役に立つと考える。

2013年04月14日

【ベンチャー失敗の教訓(第13回)】曖昧で中途半端だったポジショニング


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 前回の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第12回)】独り歩きした戦略的目標に全くついて行けなかった組織能力」では、X社が自社の組織能力を軽視したターゲティングを行っていたことを指摘したが、X社はターゲティングだけでなく、ターゲット市場でどのような顧客価値を提供し、競合他社とどうやって差別化を図るのかというポジショニングも不適切であった。

 研修業界のビジネスモデルを分析してみると、この業界で成功しているポジショニングには2種類しかないことが解る。1つは少数のキラーコンテンツに絞り込んで、特定の分野の専門性を追求するというもので、例えばモチベーション・マネジメントに特化しているリンクアンドモチベーションやJTBモチベーションズ、コーチングに特化しているコーチA、経営幹部育成に特化しているインヴィニオ、ロジカルシンキングに特化しているアルー、リーダーシップに特化し『7つの習慣』でも知られるフランクリン・コヴィー・ジャパンなどが挙げられる。

 もう1つは幅広い研修サービスを揃えて、顧客のあらゆるニーズに応えようとするものであり、例えばリクルートマネジメントソリューションズ、日本能率協会、ビジネスコンサルタント、マネジメントサービスセンター、トーマツイノベーションなどがこのタイプに該当する。また、NECラーニングや富士通ラーニングメディアなどメーカー系の研修会社も、グループ会社に様々な研修を提供しているノウハウを活かして、外販を行っている。やや特殊な例としては、ターゲット業界を絞って、その業界で必要となる研修のフルラインナップを目指すというものがある。例えば、グローバルナレッジは、IT業界に特化した研修会社である。

 前者のポジショニングにおけるKSF(重要成功要因:Key Success Factor)は、他ならぬ高い専門性と、専門分野に精通した講師をスピーディーに育成する能力である。JTBモチベーションズは自社のモチベーション理論を充実させるために様々な統計的調査を行っているし、フランクリン・コヴィー・ジャパンはリーダーシップのあるべき姿を理論化して世界に展開している。また、誰が講師を務めても高い専門性を発揮できるよう、さらには自社の貴重なノウハウが外部に流出することがないよう、このタイプの研修会社は講師を自前で育成しようとする傾向が強い。コーチAは講師=コーチを育成するプログラムが非常に充実している。

 一方、後者のポジショニングにおけるKSFは、外部の研修会社と提携しながら、幅広いラインナップを実現する能力である。人事部のニーズにきめ細かく対応するためには、10や20の研修では不十分であり、百単位の研修が必要となる。そして通常、これだけの数の研修を全て自社で開発し、自前で講師を育成することは不可能に近いから、足りない研修は外部から調達することになる。トーマツイノベーションが主に中堅・中小企業向けに発行している年間の研修案内の冊子をよく見ると、トーマツイノベーションが開発した研修はむしろ少数であり、講師名の欄には外部講師の名前(個人企業のような中小・零細の研修会社も含む)が並んでいることが多い。

 X社のポジショニングは両者の中間であり、どっちつかずの状態であった。キャリア開発研修を主力サービスにしようとしていたが、それ以外にもリーダーシップ研修、ダイバーシティマネジメント研修、経営幹部育成研修、コミュニケーション研修、営業力強化研修、ITコンサルタント育成研修と、一見するとお互いに関連性の薄い研修を自社で開発していた。X社は最大で20名ほどしか社員がおらず、その規模にしては自前の研修が多すぎたため、いつまで経っても講師と営業担当者に専門性が身につかなかった。

 ある時私は、各社員の専門性を高めるのを目的に、講師と営業担当者を1人ずつペアにして、1つのペアには1つの研修しか担当させないようなチーム体制へ変更することを提案した。ところが、その時にはX社の業績がかなり悪化しており、直後にリストラを余儀なくされたので、チーム体制は機能することなく終わった。

 X社からすると研修の数は多かったが、顧客企業から見れば研修が少なすぎた。リーダーシップ研修を提案すると、「リーダー育成よりも、マネジャーの基本的なマネジメントスキルが足りていないことが問題だ」と話す人事担当者が多かったが、X社にはマネジャー育成研修が存在しなかった。また、商談の中でしばしば新入社員研修のことが話題に上ったものの、A社長は新入社員研修を断固としてやろうとしなかった。

 X社のポジショニングが中途半端であったため、顧客企業に対して「X社はこの分野に強い」という印象を植えつけることも、「X社に相談すれば何とかなる」という安心感を持たせることもできなかった。前回の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第12回)】独り歩きした戦略的目標に全くついて行けなかった組織能力」と合わせてまとめると、結局のところX社はマーケティングの基本である「セグメンテーション⇒ターゲティング⇒ポジショニング」という一連の流れを全く検討していなかった。その経営者がコンサルファーム出身者だというのだから、コンサルファームで一体何を学んできたのかと首をかしげたくなる。
(※注)
 X社(A社長)・・・企業向け集合研修・診断サービス、組織・人材開発コンサルティング
 Y社(B社長)・・・人材紹介、ヘッドハンティング事業
 Z社(C社長)・・・戦略コンサルティング
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