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「理論政策更新研修」を聞きながら前職のWebマーケティングを思い返していた

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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。2007年8月中小企業診断士登録。主な実績はこちら

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

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2017年08月31日

「理論政策更新研修」を聞きながら前職のWebマーケティングを思い返していた


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 今年2回目の理論政策更新研修を受講してきた。これで無事に資格更新が完了した。診断士活動11年目に突入である。前回の理論政策更新研修の2時限目「中小企業の国際化支援について」は受講していてブチ切れそうな内容だったが(以前の記事「東京都の中小企業向け補助金・助成金など一覧【平成29年度】」で書いた)、今回の1時限目「新しい中小企業政策について」も聞いていて半ば殺意を覚えた(直球)。

 講師は、ものづくり補助金、IT導入補助金、創業補助金、小規模事業者持続化補助金、経営力向上計画、経営革新計画の概要を説明しただけである。概要ならばHPを読めば十分に解る。受講者のニーズは、それぞれの補助金について、審査員が納得する事業計画をどのように作成すればよいのか、できれば事例を交えながら紹介してほしいということにある。講師が「それはコンサルタントとしてのノウハウだから開示したくない」と言うのであれば、お金を取って研修の講師を務める資格はない。受講者はお金を払ってノウハウを購入しに来ているのだから。

 2時限目は「中小企業のIT利活用支援」というテーマであった。こちらは、SEO/SEMやリスティング広告を活用した売上高向上、基幹業務効率化のためのIT導入によるコスト削減といった、オーソドックスな内容であった。以前の記事「【城北支部国際部】「ここがポイント!”地方のインバウンド誘致”と”越境EC”」 ~現場での支援事例に基づく現状、課題、未来~(セミナーメモ書き)」で、最近はSNSと自社HPを連携させるマーケティングが重要になっていると書いたが、中小企業、特に小規模企業の場合は、未だに古典的な手法が十分に効果を発揮すると思う。私は前職の人事コンサルティング&教育研修のベンチャー企業でマーケティング業務も兼務していたこともあり、その当時のことを思い出しながら講義を聞いていた。成功した取り組みもあるものの、ほとんどは今振り返ると「あの時ああしておけばよかった」と後悔することばかりである。

 私がマーケティング担当になった時、最初にやったのは自社HPのリニューアル作業であった。前任者が突然退職したため、作りかけのHPを公開まで持っていかなければならなかった。通常、HPをデザインする際には、HP上で訪問者に期待するアクション(私の前職の場合は、「お問い合わせ」をしてくれること)に導くために各ページの導線をどのように設計するか、また、検索エンジンで上位に表示されるようにするためにSEO対策をどうするのかといった点を検討するものである。だが、私はいきなり作成途中のHPを渡されて、社長から「これを○月○日までに公開してほしい」と命じられた。だから、とにかく公開日に合わせて作業するので精一杯であった。

 何とかHPが無事に公開された後で、私が手始めにやった小さな改革が、無料セミナーの告知ページの改善であった。前職の企業は、研修サービスという目に見えないサービスを売るために、まず人事担当者向けに無料セミナーを開催して研修の概要を説明し、見込み顧客を獲得した後に営業担当者がフォローして商談につなげていく、という流れを想定していた。ところが、私がマーケティングを担当する前の無料セミナーは閑古鳥が鳴いている状態であった。私がやったのは、競合他社のセミナータイトルを眺めながら、それまで月並みな表現になっていた自社のセミナータイトルに一ひねり入れただけである。これだけで、無料セミナーはすぐに満員になるようになった。無料セミナーは2週間に1回のペースで行い、1回あたりの定員がだいたい20名であったが、1年間で述べ500社以上の見込み顧客を獲得することができた。

 だが、問題は述べ500社以上も見込み顧客を集めたのに、一向に売上につながらないということであった。「この間のセミナーに来たあのお客様から受注できたよ」という話を営業担当者から一度も聞くことがなかった。原因を調べたところ、営業担当者に見込み顧客のリストを渡した後、営業担当者は参加者のフォローを全く行っていなかったのである。これにはさすがに愕然とした。なぜ参加者のフォローをしないのか聞いてみると、「セミナーに来る人は担当者レベルで意思決定権がないから、フォローしても無駄だ」、「我が社がターゲットとする顧客としては社員規模が小さすぎる」、「手持ちの商談で手いっぱいで、フォローどころではない」などと、色々と言い訳を並べ立ててきた。フォローをした結果、無料セミナーには意味がないと主張するならまだしも、フォローもせずに言い訳をするのは、職務放棄ではないかと憤りを覚えた。

 私がマーケティングで自由に使える予算は、事実上0円であった。毎月7万円のHP維持コスト(今考えると随分と高かった)と、毎年1回人事・教育研修関連のソリューションを集めた展示会に出展するための小間料約500万円があったのだが、これは私が自由に使えるお金ではない。展示会は私がマーケティング担当になる前に3年連続で出展していたものの、商談には結びつかなかった。私は、費用対効果がないため、マーケティング担当になった暁には出展を取り止めようと社長に提案するつもりだった。ところが、展示会主催会社とパイプがある営業部長が、勝手に私を展示会の責任者にして出展を申し込んでしまった。しかも、後から話を聞くと、前職の社長が展示会主催会社の役員と仲良しで、関係上断れないから出展を申し込んだのだと言う。

 退職してから、大企業で国内や海外の展示会に出展したことのある人からあれこれと話を聞いた結果、展示会というのは、たまたま会場を訪れた新規顧客をつかまえることはほとんど期待できないことが判明した。展示会に出展する場合には、あらかじめ既存顧客や見込み顧客をリストアップして招待状を送り、自社のブースを訪れてくれるように仕込んでおく。そして、ブースで最新の製品・サービスを見せながら、具体的な商談へと持ち込むのである。このことを在職中に知っていれば、もっと違ったアプローチができたかもしれない。

 在職時の私は、効果のない展示会出展に何百万円も使うくらいならば、SEO対策とリスティング広告に使いたいと考えていた。今回の理論政策更新研修を聞きながら、Webマーケティングには大きく2つの柱があると感じた。1つは、いわゆるビッグワードで検索された場合に、自社のHPが上位に表示されるようにすること、もう1つは組み合わせキーワードによるリスティング広告を大量に登録し、検索者のニッチなニーズをかき集めて自社HPに誘導することである。

 私は、自社HPのリニューアルが終わった後、自力でSEO対策を行うことにした。<title>タグに重要なキーワードを入れ、余計な単語は入れないというのは、SEOでは基本中の基本である。前職では、「キャリア開発研修」と「リーダーシップ研修」を売りにしようとしていた。それぞれの紹介ページの<title>には、この名前が入っていた。しかし、SEOの観点からすると、「開発」という言葉が余計である。「キャリア開発 研修」よりも、「キャリア 研修」で検索するのが普通であろう。また、「リーダーシップ研修」は「リーダー研修」としたかった。これも、「リーダーシップ 研修」で調べる人より「リーダー 研修」で調べる人の方が多いからである。しかし、社長は妙にこのサービス名に思い入れがあるようで、私は研修名を変更するよう説得し切れなかった。

 自力でSEO対策をすると言っても、予算が0円ではできることにも限りがある。外部リンクを獲得するために、私が個人的に運用していたブログからリンクを貼ったこともあった。検索エンジンでトップ3(検索エンジンでは、トップ3に表示されなければ、表示されていないのと同じである)に表示させたいページに関しては、お金をかけてでも外部のSEO業者の力を借りた方がよかったと思う。幸いにも、研修業界それほど市場規模が大きいわけではないため、1ページあたり月10万円ぐらいでSEO対策ができるようであった。よって、主力となる3つ程度の研修について、外部業者を使ってSEO対策をする。これで、10万円×3ページ×12か月=360万円となる。

 そして、残りの140万円をリスティング広告に投入する。リスティング広告は、ビッグワードだとどうしても入札価格が高くなる。そこで、ニッチなキーワードで大量の広告を出すのが効果的である。ニッチなキーワードで検索する人は、ニーズが明確であるから、そういう人を低コストで自社HPに誘導できれば非常に有効である。前述のリーダーシップ研修であれば、「管理職 育成 研修」、「課長 育成 研修」、「部長 育成 研修」、「マネジャー 育成 研修」、「管理職 コミュニケーション」、「管理職 モチベーションアップ」、「管理職 部下育成」、「管理職 マネジメント力」、「チームビルディング 研修」、「若手リーダー 育成」、「次世代リーダー 育成」、「リーダー ビジョン」、「リーダー 価値観」、「リーダー 研修 効果」など、思いつく限りのキーワードを登録する。ものの本によると、キーワードは1,000個ほど用意するべきだと言う。

 以上のSEO対策とリスティング広告を行うと、自社HPのアクセスがどの程度増加するのか、その結果コンバージョン率はどのくらい上がるのか、その結果、成約に結びつく商談がどれぐらい増えるのか、投資はちゃんと回収できるのかをきちんと計算して社長に提案すればよかった。それができず、予算0円の現状を嘆いてばかりいた当時の私は能力不足であった。

 私が自社HPをちょこちょこと改善する中で解ったこともある。リニューアル後からしばらくの間は、それぞれの研修紹介ページの内容を充実させることに力を注いでいた。キャリア開発研修であれば、キャリア開発とはそもそも何なのかという話から始まり、我が社が考えるキャリア開発の説明をし、その後で研修コンテンツの内容を紹介するという、かなり冗長なページになっていた。だが、GoogleAnalyticsの解析結果を見ていると、研修紹介ページでの離脱率が非常に高かった。私は情報量が多すぎるのがいけないと考えるようになった。そこで、あれこれと試行錯誤した結果、私が退職する直前には、研修の概要と研修で得られる効果のみを記載するシンプルなページに落ち着いた。研修概要の部分には、開示できる範囲でテキストやワークを載せ、研修の具体的なイメージを持ってもらえるようにした。すると、今までほとんど売れていなかったある研修で、売上高が兆単位の超大企業から問い合わせがあり、見事受注につながった。

 製品・サービスの紹介ページはできるだけシンプルにした方がよい。せいぜい1スクロールで全ての情報が解るようにする。ただ、研修サービスは目に見えないサービスであるため、工夫が必要である。その1つが、前述のように、テキストやワークのイメージ図を挿入することであった。私はそれに加えて、研修の一部分を動画で配信することも考えていた。さらに、受講者の声を掲載するというアイデアもあった。受講者の声は、テキストで記述するとその会社が適当に作文したものに見えるので、実際のアンケートをスキャンして、画像を貼りつけるのがよいと思っていた。しかし、これらは私の怠慢で在職中に実現できなかった。

 もう1つ解ったことがある。それは、コンテンツがリッチであることと、ページ数が多いことはイコールではないということである。私がマーケティングを担当していた頃、それまでの習慣で、講師やコンサルタントが定期的にコラムをHPにアップすることになっていた。コラムを載せることでHPを充実させ、我が社には信頼できるプロフェッショナルが揃っていることをアピールし、それぞれの研修紹介ページへと誘導するのが目的であった。私もその方針を引き継いで、講師陣にはコラムを書けと随分発破をかけたものである(その講師陣〔皆、私よりも年上である〕がちっとも締め切りを守らないため、私がストレスを溜めていたことは以前の記事「【ベンチャー失敗の教訓(第40回)】ダメ会社の典型=遅刻や締切遅れが当たり前の体質」で書いた)。

 しかし、私が退職する間際に解ったことだが、GoogleAnalyticsを見ていると、コラムページの直帰率や離脱率が非常に高かった。コラムページには関連する研修紹介ページへのリンクが張ってあったにもかかわらず、クリック率は低かった。つまり、コラムを読む人はコラムだけが楽しみであり、研修の発注にはつながらないということであった。この点にもっと早く気づいていれば、コラムを作成するという徒労に振り回されることもなかったのにと悔やまれる。ページ数が少なくても、それぞれの研修紹介ページが解りやすくデザインされていれば、それで十分なのだ。




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